2009-11-18

ワクチンのお話。。。。

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今回はワクチンのお話です。。。。

ワクチンって何?

ワクチンとは「特定のウィルスや病原菌(多くの場合は毒性を弱めてあるワクチン製剤として)を犬の体に注入し人工的に感染させることでこれらの抗原に対して抗体を作らせ、自然感染で侵入してくる抗原に備える」というものである。抗体が体で作られている間は侵入してきたウィルスや菌は抗体が退治してくれるので発症に至らずに済む。だから「予防(のための)接種」といわれる。

一度作られた抗体はその後も一定期間作られるが、抗原との接触がなければ徐々に不必要なものとして作られなくなるため、抗体生産を持続させるために再接種(ブースター)が必要となる。

どうしてワクチンを打つのか?

今、犬の予防接種として接種が薦められているものには2つのカテゴリーがある。

ひとつは狂犬病、もうひとつはその他の病原ウィルス・菌である。この2つには少なからず法的な違いがあるため、犬においては混ぜて考えてはいけないのだ。

狂犬病は言わずとして知れた法定人畜共通感染症である。感染すると必ず死に至ることから国際的に撲滅のための対策(国際検疫)がとられているもの。

感染経路は罹患犬の唾液、多くは噛まれることによって感染する。狂犬病ウィルスは体内で末梢神経を伝って中枢神経に入り、そして手当たり次第に噛むといった狂ったような行動を引き起こし、中枢神経から唾液腺に降りてきたウィルスは犬が別の動物を噛むことで新しい宿主へと伝播してゆくのだ。まるでウィルスに操られたかのような犬の行動、実にうまくできていると関心さえしてしまう。

現在の日本は狂犬病発症が無くなって久しい清浄国だから日常生活において狂犬病にかかる危険性は理論的にはゼロ、しかし現実には隣国ではまだまだ狂犬病の発生が多く、そして日本沿岸漁港に着く外国船などに同乗している犬が無検疫で上陸していることを考えるとそうそう呑気にしていられない。

感染から発症までの潜伏期間は多くの場合2週間から3ヶ月程度とされているから(もちろん例外あり)、船に同乗している犬が大陸出向前に噛み傷を負っていたりすると日本に着く頃にちょうど発症、なんて可能性も充分だ。

もしも日本の犬に狂犬病が発生したら、その時政府はどう対応するだろう?狂犬病清浄国である現在の日本がこの先も守られるという保障は現状にはどこにもない。

とまぁ、脅すつもりは毛頭ないのだが、日本の狂犬病予防法が改正されない理由はこの辺にもあるのかもしれないと思ったりする。現状では「狂犬病予防法」第5条において「狂犬病予防接種は年に一回が義務」とされており、これが法律としてある限り「今年の狂犬病ワクチンどうしようかな?」などと考えをめぐらせることも、あるいは自己判断で接種を受けさせないことも話題として不適切なわけだ。

獣医師の所見なしに自己判断で狂犬病予防接種を受けさせなかった場合、飼い主は「狂犬病予防法違反」となることをあらかじめ頭においておこう。狂犬病予防法によると「犬に予防注射を受けさせず、または注射済票をつけなかった者」は20万円以下の罰金とある...もし見つかれば、の話だが(この先は省略)。



さて、別のワクチンを見てみよう。

抗体は抗原の種類に応じて作られるので「何でも打てばいい」というものではなく、打った抗原に対してしか抗体は作られず、逆に言えば防ぎたい病原菌を用いたワクチンを接種すること、これが大事。「5種混合を打ったから大丈夫」と漠然に構えるのではなく、その中身を確認しておくことが必要だ。

混合ワクチンの中でもパルボウィルス症、犬ジステンパー、肝炎は特に仔犬や老齢犬にとって致死率の高い感染症で、感染源もパルボならば日常的な周辺環境、ジステンパーは感染している犬との接触、肝炎に至っては罹患犬のおしっこがかかった草などを舐めたりすることで感染する。

仔犬は胎児の頃には胎盤を通し、そして生まれてからは母乳を飲むことで母犬から多くの抗体を受け継ぐ。これを移行抗体といい、仔犬が離乳して一人で動き回れるようになるまで仔犬の体を守ってくれている。しかしこの移行抗体も時間とともになくなり、やがて仔犬は自分の体で抗体を作らなければならなくなる。

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[Photo by AndyboyH]

例えばどこからか仔犬を買い、ワクチンを打たずにすぐに散歩に出て1-2週間後に突然激しい下痢が起り日に日に弱っていったというケースは意外と多いと思う。移行抗体が消え自分で抗体を作り出すまで、あるいは母犬からの移行抗体のない無防備な状態で病原に感染してしまうケースである。そんな時慌てて動物病院に駆け込むならばかろうじて命が助かることもあるが、下手をすると仔犬はそのまま衰弱して死んでしまう。ワクチンの大切さを知らなければ「やはり仔犬は弱い」と思うだけかもしれない。

そうじゃない、仔犬にある移行抗体が消えてゆく時期と入れ替えにワクチンを打つことで無防備な状態をなくす事ができるのだ。

また仔犬の時期に打ったきりではワクチン効果もいつかは薄れ、成犬になってから再接種(ブースター)を打たなければ犬の体にどれだけの抗体が残っているかは容易に想像することができない。気が付けばまた無防備、ということだってありうる。事なきで終わればそれに越したことはないのだが。

上記に上げた3種の病原に地域性のあるレプトスピラ症を加え、法律で接種が義務付けられていない「その他のワクチン」こそ、実は日常において大きな予防の意味を持つ。それを打つか打たないか、それこそ飼い主の決定次第なのだ。

では、とにかくたくさん打っておけばいいか????????

ワクチンの副作用

ワクチンの副作用で最も多いのはアナフィラキシー反応。これは一度目の接種で製剤成分に対して抗体が作られ、二度目の注射で反応を起こすアレルギー反応のひとつである。注射箇所が腫れたり痒みが出たりという軽い症状から、嘔吐・蕁麻疹、行動の変化、四肢の麻痺、呼吸困難や意識不明などの重いショック症状をも引き起こし、血圧低下により時には死に至る。これらの反応はどのメーカーのワクチン製剤に関わらず危険を否定することはできないから、アレルギー体質だとわかっている場合には充分な注意と対応が必要だ。

このアナフィラキシー反応の他にもワクチン接種が自己免疫病の引き金や妊娠中の母犬では流産の原因となることや、狂犬病ワクチンの場合注射箇所に繊維肉腫を作る原因となることも有名。

また生まれつき免疫機能が弱かったり、ストレス・病気治療などで免疫力が弱っている犬では予防のために接種したはずの病原により発症する事だってある。

それ以外では接種間隔が短すぎたり(10日以下)、再接種を怠ってしまったことによりワクチン効力が充分得られないこともあるほか、予防接種により負荷可能な免疫力を得られる犬は健康体で約95%、条件が悪ければ65%といわれる。かくいううちの犬も毎年狂犬病の予防接種をしているにもかかわらず、今年に入って渡航準備のつもりで行った抗体価検査で各国検疫が要求する数値に達していないことが解りちょっとがっかりしてしまった。体質なので嘆いても仕方ないことだが。



例え各国検疫が要求する抗体価に達しなくても抗体はあるから大丈夫。

基本免疫とブースター・インターバル

前回紹介した狂犬病・パルボウィルス症・ジステンパー・犬伝染性肝炎の4つの病原は感染すると致死率が高く犬にとって最低限必要とされるため「コア・ワクチン(Core=核)」と呼ばれる。

ここでアメリカン・アニマル・ホスピタル・アソシエーション(AAHA)やドイツ連邦臨床獣医師会(bpt)などで奨められているコア・ワクチン・プログラムを紹介しておこう。

パピー・ワクチネーション(Puppy Vaccination)
仔犬の時期に長期にわたり安定した免疫(基本免疫)をつけるためワクチンを数回打つ

1回目: 8週(または6週)に肝炎、パルボウィルス症、ジステンパー
2回目: 12週(または10週)に肝炎、パルボウィルス症、ジステンパー、狂犬病
3回目: 16週(または14週)に肝炎、パルボウィルス症、ジステンパー、(狂犬病)
ブースター(Booster:再接種)

1回目: パピー・ワクチネーション最後の接種から1年後に肝炎、パルボウィルス症、ジステンパー、狂犬病
2回目以降: 3年毎
早期には6-10-14または8-12-16のリズム、12週以降に最初のワクチンを接種する場合には1回目と2回目を3-4週間の間隔で打つことにより基本免疫は充分できる。16週(または14週)において2回目の狂犬病ワクチンを打つのも安定して抗体価をあげるため、「念のため」にもう一回しておけ、ということらしい。

とはいえ、数年前まで6-10または8-12のリズムが普通とされていたのに、研究が進んだお陰で少々過保護気味に傾いてきているように私には感じられる。ワクチン接種が1回増えたところで100%の免疫力が保障されるものでもないのだけれど、若干は効果が上がるからという悲観的な願いがそこには込められている。

ここでさらに注目すべきは2回目以降の再接種についてだろう。米ウィスコンシン・マディソン大学のシュルツ教授の調査によると、ジステンパーなどはワクチンに使われたウィルス株によっては血清中に15年抗体価が確認され、パルボウィルスに対しても(おそらく自然感染での病原との接触による)7年の効果持続が確認されている。教授は自分の研究調査を元に自分と子・孫の愛犬たちに狂犬病は3年毎、その他のコア・ワクチンは仔犬の時期に予防接種を1-2回したきりで30年来なんの問題も感染もない、という。

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いずれにせよ各国獣医師会が犬のワクチンプログラムについて明解なガイドラインを掲げているのに対し、日本ではいまだに狂犬病予防のみにかかりっきりで、その他の(本当に犬にとって感染の危険性の高い)ワクチンについては非常に不明瞭なままであることを指摘したい。

これでは飼い主どころか獣医師側もワクチンについて充分把握しきってないのではないかと疑いたくなる。

ちなみに母犬からの移行抗体は母犬がワクチン接種を受けていたり過去に感染したことがある場合など抗体を持っているときに限られるから、もしも母犬がワクチンを受けていなかったり感染したことがない場合には、仔犬は特定の病原に対しては無防備である。ちゃんとしたブリーダーの元であれば母犬のワクチン状況・既往歴なども確認できるが、ペットショップではそれすらも知ることができず仔犬が感染の危険にさらされるのだ。かといってペットショップに並ぶ生後4週の仔犬に闇雲にワクチンを打って有効か?というとそうではない。ものには限度と言うものがある。

日本のように生後4週程度で仔犬を親・兄弟犬から引き離すうえ予防接種もされていない仔犬を売り、さらには「3回目のワクチンが終わるまで外出を待て」だなんて、過保護な対応はせいぜい犬の性格を歪める原因にしかならない。

仔犬の精神成長を考え、せめて母犬からの移行抗体が消えてゆく時期と入れ替えに接種する初ワクチンの時期は親元に置き、保護された環境で親兄弟と過ごせば仔犬は心身ともに良い状況で新しい家族の元へと旅立てる。例え母犬からの移行抗体がない仔犬だって6週で一回目のワクチンを打ち、9-10週に2回目を済ませば安全に社会勉強が始められるというのに、ワクチンプログラムを重視するあまり仔犬の自然な成長に欠かせない社会化の時期が台無しにされてしまうことがかわいそうでならない。



以上のコア・ワクチンの他に状況によって必要性の出てくる個別ワクチン(ノン・コア・ワクチン)があり、レプトスピラ症、ケンネルコフ、犬ヘルペスウィルス症、バベジア症、ボレリア症などがそれに数えられる。

これらの病原には地域性があるため必要に応じて発症タイプに見合ったワクチンを受けなければ意味がない。「とりあえず今回は8種にしておきましょう」という獣医師の言葉は聞き逃さず、かならず中身を確認することをオススメしたい。





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